劇場版 も〜っと!ザ☆シュビドゥヴァーズ


「うん、今日もいい天気だ」編曲アジト展望台、窓に映る桜を眺めながら、ヨン様は大きく伸びをした。季節は春、新しいことの始まる季節。シュビドゥヴァーズの面々も進級を前にして、少し浮ついた雰囲気があった。「何かが起こりそうな予感がする」

「オッスオッスおはよう!」エスが展望台のドアを蹴破る!「新聞取ってきたよ!」「ありがとう。あとドアは直しておいて」ヨン様は涼しい顔。慣れているのだ。「それよりこの記事さあ」エスは新聞を覗き込んで目を輝かせる。

 新聞には『オペラ歌手ジョージ三世失踪』『名犬ラッスー、またもお手柄』などの記事が踊っている。「何?失踪なんて、まるでフルートゥの……」「そっちじゃないよ!こっち!」エスが指差したのは芸能欄の記事だ。『プリティーマコト、ライブ開催決まる』

「え、はあ、うん」「その反応!まさか知らないの!?」エスは信じられないといった様子で白目をむいた。「マコちゃんのライブ、超人気で全然チケット取れないんだよ!一体何口応募したと思ってる!」S波憤懣やるかたないといった様子で叫ぶ。ヨン様はやれやれと肩を竦めた。慣れているのだ。

 窓の外に目を向けると、細身の男の子がアジトの方へ歩いてくるのが見えた。桜の花が舞う薫風の中、短めの髪をなびかせる中性的な美少年だ。彼こそ合唱戦隊シュビドゥヴァーズのトップ、カミサトだ。その顔は端正であった。

「たまんねぇな!」「ヒューッ!」「マジでたまんねぇよ!!」急な風に額を押さえたカミサトをすれ違った二人の全裸中年男性が囃し立てる。「たまんねぇよ!」「たまんねぇ!」「……GRRRRR!」「え?」二人はまとめてブッ飛んだ。キムキムの飛び蹴りが炸裂したのだ。

「ワオ!俺も参加だ!」言うが早いか、エスは窓ガラスをぶち破ってアジト前の道路に踊り出した!動転したカミサトは入れ替わりにアジトへ飛び込む!「何やってるんですか!?」「こっちが聞きたいよ」とヨン様。道路ではキムキムとエスがそれぞれ馬乗りになってパウンドだ!

「アーッ!アーッ!」「バウ!バウ!」「ところでこれ、何で殴ってんの?」「ワオン!」「アーッ!アーッ!」殴られている二人の中年男性の懐から、数枚の紙がこぼれ落ちる。キムキムは反射的に拾い上げ、咥えたものをエスに見せた。「これは……マコちゃんのチケットだ!」


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 ドゥームドゥームドゥーム…………悪魔的なベース音の響く部屋で何者かがPCの前に腰掛けている。紫色の長い髪、挑発的なツリ目、毒々しいリップ……おお、彼女はもしや、街を恐怖に陥れたあの魔人、三幹部が一人、策士のオイコーではないのか?彼女は爆発四散したはずでは!?

 しかし彼女が生きている理由はここでは語られることはない!なぜなら劇場版とはそういうものだからだ!「チケットの買い占めは済んだか?」オイコーの隣、紳士服をまとった大柄な男が口を開いた。「順調に進んでますわプロフェッサー・ゲオルゲール」オイコーが答える。

「このままいけば我々の元に全てのチケットが集まる」「そうですわ、そうすれば魔王フルートゥさまの復活も近づく……ご協力感謝しますわプロフェッサー・ゲオルゲール」シュビドゥヴァーズがナントカ封印をかけた魔王フルートゥを復活させるなんてすごく悪いやつだ!

「では、予定通り計画を進めようか」「シュビドゥヴァーズのやつらはどういたしますの?」三幹部のうち一人を倒され、もう一人を懐柔された経験を持つオイコーはかなり警戒している。「もしもの時のために第三作戦を展開させろ」「畏まりましたわ」


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 ……ライブ当日!シュビの面々はプリティーマコトのチケット(盗品)を握りしめて会場へ向かう!「あれ、みんなちょっと早すぎない?」受付に座っているのは看板娘のテルちゃんだ!「まだ開場までは時間あるよ!」だがエスは構わず入場していく「こっちから食べ物の匂いだ」

「ちょっと、止まって止まって!」テルちゃんが必死に声をかけるがもはやエスは赤い布を見た闘牛のごとし!止まらない!「GRRRRRRR!」「ウワーッ!」取り押さえに来た警備員にキムキムが反射的に噛みつく!こうなったら入場するしかない!

 扉を蹴破ってホールに出る!そこにいたのは……「よく来たなシュビドゥヴァーズども!」「ここで会ったが百年目ですわ!」スポットライト照射!三幹部魔人オイコーと謎の紳士ゲオルゲールだ!彼らがここにいるということはつまり!

「チケットを買い占めて得た負のパワーを使ってフルートゥ様を復活させようという壮大なる計画、邪魔させるわけにはいきませんわ!」オイコーが手を上げると、銃で武装した警備員……否!ニローンたちがシュビを取り囲む!食べ物で釣って罠にかけるとは卑劣!

「みんな!メイキャップ・ソングス!変身だ!」ヨン様に呼応しメンバーが次々と変身を遂げる!変身バンクは半裸だがまばゆい光で見えにくいのでノープロブレムだ!「この世に蔓延る悪を許さず、幼女は舐めてもノータッチ!合唱戦隊ザ☆シュビドゥヴァーズ!」背後で爆発!

「かかれーッ!」オイコーの号令とともにニローンたちが飛びかかる。乱闘!「ウォーッ!」エスが目の前の二人をなぎ倒す!カミサトが横からカバーリング!「アーッ!」ヨン様は巧みに射撃を避けフレンドリーファイアだ!「こんなもんじゃわたしたちは倒せないよ!」キムキムが吠える!

「我々には第三作戦がある!これだ!」ゲオルゲールが指を鳴らすと会場にゾンビたちが雪崩れ込んでくる!なんてことだ!テルちゃんのゾンビもいるぞ!「許さない!」「バウバウ!」ヨン様とキムキムが飛びかかる!だがそのとき!オイコーの誘導性ミサイルがキムキムを撃ちぬいた!

「まだだ、諦めないで!」しかし多勢に無勢だ!シュビは少しづつ舞台袖に追いやられていく!もはや万事休すか!?だがその時、マイクのハウリング音だ!一体何が!?ステージ中央には……キムキム!カウントを刻む!

 何故キムキムが生きているのか!?いかに彼が強くてがんじょうなバイオポメラニアンといえど、ミサイルの直撃を受けてただでは済まないはずだ!「ワンワン!」キムキムは懐から何かを取り出す!あれは!?

「こいつを懐に入れてて助かったぜ!」キムキムが懐から取り出したのは『男声合唱とピアノのためのTHE IDOLM@STER』『男声合唱とピアノのためのPOKEMON』『男声合唱とピアノのためのマクロスF』の楽譜セットだ!「CDとセットで買うとお得なんだワン!」

「小癪なーッ!」オイコーは再び撃墜せんとミサイルを放つ!だがカミサトが撹乱し、ヨン様が叩き落とす!息のあった連携だ!シュビはステージ中央のマイクを取る!エスがベースを歌い始め、旋律が乗る!

これは……合唱!この曲はザ☆シュビドゥヴァーズの代表曲、幻のシングルとしてネット上に流通している「Jogio,pero pero」だ!四人のパフォーマンスを前にゾンビたちの肉がボロボロに崩壊していく!男声合唱が弱点だ!

「おのれザ☆シュビドゥヴァーズめーッ!」魔人オイコーは残ったニローンを連れて退却する!ホールには無数のゴアめいた惨状だけが残され……いや違う!ゲオルゲールによってライブに参加できなかった一般客たちが大挙して押し寄せている!ライブが始まる時間だ!

「みんなーっ!今日は楽しんでいってねーっ!」ステージから降りたシュビにかわって出てきたのは、国民的アイドルのプリティーマコトだ!ゲオルゲールは雷に打たれたかのようにそこを動かない!「じゃあ、さっそく一曲目、いってみようかーっ!」

 ワーワーワオー、ワッパッパオー!ミュージックが流れだす!同時にゲオルゲールの体から光が……あれは!失踪したはずのオペラ歌手、ジョージ三世ではないのか!?「私が……私が間違っていた……ライブとは一人で独占するものでなく、皆と分かち合うもの……私は……」

 ワーワーワオー、ワッパッパオー!テルちゃんがジョージ三世の肩を叩く。「またやり直せばいいよ!」「テルちゃん!無事だったの!」カミサトの声に、テルちゃんは笑顔で応える「ゾンビの肌が合唱で浄化されたの!新陳代謝できれいになっちゃった!」

 ワーワーワオー、ワッパッパオー!エスとカミサトがオイコーと踊る!敵と味方、意地、確執、そういったなんかの問題を乗り越えて踊る!ヨン様も!ジョージ三世も!キムキムはシロッコーとラインダンス!テルちゃんも!フルートゥも!ワーワーワオー、ワッパッパオー!

 ワーワーワオー、ワッパッパオー!ワーワーワオー、ワッパッパオー!


「も〜っと!ザ☆シュビドゥヴァーズ プリティーマコトと謎の紳士」

 FIN……






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